かつて誰も経験したことのない不景気が訪れる。『危機の時代』ジム・ロジャーズ

今回はジム・ロジャーズ氏のインタビューをまとめた『危機の時代』という書籍が面白かったので、内容を紹介します

ジム・ロジャーズとは

まず初めにジム・ロジャーズ氏についての紹介です。

ジム・ロジャーズは、世界三大投資家の一人として、とても人気があり、あのウォーレンバフェットやジョージソロスと肩を並べるほど、とても有名な投資家です。1973年にクォンタム・ファンド(Quantum Fund)と呼ばれるヘッジファンドの運用を開始し、株式、債権、為替、コモディティといった、幅広い分野で運用を行なってきました。現在、ロジャーズ氏は78歳で、シンガポールに居住しています。

ロジャーズ氏は投資家として、1971年のニクソン・ショック、1987年のブラックマンデー、2008年のリーマン・ショックなどを経験しています。さらに、そういった危機の中でさえ利益を積み上げてきました。また、歴史学を専攻しており、古代ギリシャからローマ帝国、中国の宋王朝、大航海時代のスペイン、大英帝国、大恐慌時代の米国に至るまで、世界の歴史に精通しています。

歴史を学ぶことは、物理学や経済学のように未来を予測するための手段ではありません。しかし、歴史を学ぶと、世界を見る視野が広がり、私たちの目の前には、想像しているよりもずっと多くの可能性が満ち溢れているという事を理解できるのではないかと思います。

投資家として様々な危機を乗り越え、さらに歴史に精通しているロジャーズ氏の考えは、これからの経済を読み解く上でとても参考になります。
世界経済に対して俯瞰の目を持つ彼は、コロナショック後の世界をどのように思い描いているのでしょうか?

危機の到来と戦争

これから、誰もが経験したことのない不景気が訪れるだろう

新型コロナウィルスのパンデミックにより、世界経済は大ダメージを受けました。主要な株価指数はクラッシュし、多くの失業者が続出しました。
ロジャーズ氏は、2019年からリーマン・ショックをはるかに超える危機が迫っていると警告しており、新型コロナウイルスの感染拡大はあくまできっかけに過ぎないと発言しています。その中で、今回の経済危機が史上最悪になるだろうと予測しています。
理由は主に過剰債務にあります。世界の多くの中央銀行は、金利をかつてないほど低水準に策定し、通貨の供給量を増やすことによって経済を支えてきました。
借金は好景気では問題になりませんが、ひとたび危機に陥ると深刻な問題となって私たちを苦しめます。

コロナ対策で巨大化する世界の債務

危機の本番が迫っている。次がどこになるかは分からないが、このままでは多くの国がデフォルトする可能性がある。世界中の多くの企業、多くの国、多くの自治体が過剰な債務を背負い込んできた。これから、そのツケを払わなければならない。過去にも危機が起こるたびに、同じようなことが起きている。「今回は違う」などと言っている人間がいたら、何も分かっていないだけだ。

また、歴史から学ぶと景気が悪化するとしばしば戦争が勃発します。貿易戦争で済むこともありますが、軍事的な戦争になることもあります。すでに戦争は起こっており、米国はアフガニスタンで長年戦争を続けています。イランともソレイマニ司令官の殺害を受け、事実上の戦争状態に突入しています。
未来のことは誰にも分かりませんが、トランプが新たな戦争に踏み切る可能性は否定できません。第一次世界大戦では、多くの人が聞いたことも訪れたこともない国で起きた事件が発端となり、世界を巻き込んだ戦争へと発展していきました。
最近ではよくトゥキディデスの罠という言葉を聞きます。これは世界の覇権を争う国は、戦争を避けられないという意味で用いられます誰が見ても分かる通り、米国と中国の対立は日に日に悪化しているため、軍事衝突へ発展してしまう可能性もそう低くはないということです。

過去の経済を振り返ってみても、経済が拡大し続けた事はありません。縮小と拡大を繰り返しながら成長してきました。つまり、次に待ち受けているのは不景気の波ということです。そして、その波は過剰債務といった麻薬の効果が切れることにより、かつて誰も経験したことのない不景気となるでしょう。

世界の重心は東へと動く

書籍の中でロジャーズ氏は、これから中国が世界経済をリードする時代になると断言しています。中国は広大な土地、巨大な人口、そして優秀な人財を持ち合わせているからです。米国のファーウェイ叩きが中国の力の強さを物語っていますね。そして、相対的に米国の力は衰退していくことになります。

その他に注目している国として、世界名目GDPランキング12位のロシアを上げています。理由は以下となります

◉ロシアは資産が多く、借金が少ない
◉中国と良好な関係を築いている
◉広大な土地とエネルギー資源がある
◉現在は物価が安い

また、ロジャーズ氏は“常識というものは長く続かない”と繰り返し言っています。

今の常識を信じてはいけない。誰もが当たり前と考えている常識は短期間で変化する。
歴史がそれを証明している。第二次世界大戦、ベルリンの壁の崩壊、中国の急速な経済発展を事前に予想できた人はほとんどいなかった。
1919年のイギリスは世界で唯一の支配的な国だった。
1819年にオーストリア帝国は非常に強力な国家だった。
1619年のスペインは、世界中の植民地を支配していた。

新型コロナウィルスの感染拡大に限らず、世界を驚かせるような危機は突然起きるもので、それはグローバルな社会や経済を激変させます。そして、そのような変化は、10~15年ごとにやってきます。
このように歴史を通して考えてみると、今までと違った角度から物事を考えることができます。中国が米国にかわって世界をリードしていくことになっても、なんら不思議ではありません。

米国の経済的繁栄は長年にわたり続いており、誰もがこの繁栄はこれからもずっと続くものだと思っています。しかし、残念ながら繁栄には必ず終わりが訪れるものです。

1980年代の日本のバブル期にいた人々は、日本の繁栄がいつまでも続くと思い疑いませんでした。なんと言っても、日本全土の土地の値段が、アメリカ全土の約4倍にまで高騰していたくらいです

誰もが当たり前と考えている常識は、15年経つと何もかも間違っている可能性がある。肝に銘じておこうと思います

さいごに…

NIKKEI225(週足)
S&P500(週足) 世界恐慌時

コロナショックを受け、日経平均株価は大幅に下落しました。しかし、誰もが予想することができなかったほどの力強い反発を見せ、下落前の水準へと回復してきています。
ネットでは実体経済との乖離が進んでいると騒がれており、日銀のETF買入れを疑問視する声が上がっています。このような人工的に作られた株価の上昇は、長く続かないのではないか?と、さすがに考えてしまう内容です。
過去の世界恐慌禍の中でも、米国はあらゆる手を使って株式市場を回復させようと、たくさんの資金を投入しました。そして一旦は反発したかのように見えましたが、再びクラッシュし、50%下落しました。

今回もどこかで歪みが生じ、株価は下落に転じるのではないか?というのが自分の正直な考えです。少なからずここから高値を追っていこうとは思えません。

中期的には、ドル、円、ゴールドといったいわゆる安全資産が強含む展開をイメージしています。

余談ですが、このコロナショックの中で証券会社の口座申請数が急増している動きも気になります。やはり、市場には低金利で行き場を失った資金が溢れかえっているのかも知れません。しかし、金融緩和により、低リスク資産から得られる収益が低下すると、人々はかえって消費を抑えるといった統計も出ているみたいです。

最後に書籍で紹介されていた相場の格言を載せておきます。

◉他人と同じことをすると、他人と同じ結果しか得られない

◉『今回こそは違う』と言う言葉は、最もコストが高い過ちだ

◉最も悲観的な時が買い場であり、最も楽観的な時が売り場である

END